誤訳 まえがき
私は寝ている時も起きている時も大体いつも漫画のことをずっと考えている。
私の新作漫画、「誤訳」についても例外ではなく、毎日ずっと誤訳のことを考えている。
誤訳制作のテーマはまず第一に小学生の自由帳のようであること。
それから今までの創作の延長上、今まで積み上げたものを無駄にしないこと。
そして常々考えていることだが、集大成として相応しいものであること。
どうすれば面白くなるのか、要素を足したり引いたり、描きたいものはもうないか、やっぱりあそこを書き直そうか、あのシーンはもっと面白くなるはずだ、など。意識することは尽きない。
誤訳の話をしよう。
誤訳は、私の好きなものの宝箱みたいな漫画だ。
誤訳の始まりは、最初に誤訳というタイトルと、バラバラだった数種類のアイデアがあった。神の力を持っている人間とか、近親相姦の話がそうだった。それからアイデアを増やしていった。
まず、私が漫画でずっと扱ってきた異能力バトルというトピックで話そう。
それから誤訳はミステリーモノであって、ドラマであって、詩もあって、あとSF的だ。
順番に話をしよう。
異能力バトルとしては、私はもう強い能力とか、弱い能力を明晰な頭脳で使いこなすとか、主人公が能力に覚醒するとか、それよりもっと異能力バトルとしての新しいスタイルを探すというのは、そういうのは疲れてしまった。
言うなれば、異能力バトルのクラシックスタイルのような感じで、誤訳のバトルをデザインした。
誤訳はバトル要素がとても多い漫画だ。しかし、新しい嗜好を凝らした感じのバトルはあんまりない。
私は炎の能力者とか氷の能力者とか、電気の能力者とか、そういうポケモンのタイプみたいなやつが嫌いなんだ。
どちらかといえば確率操作みたいな応用が効く割と何でもありの能力が好きだ。
あんまり伝わらないかもしれないけど、私が一番好きな能力(魔法)の演出は、ハウルの動く城のハウルが魔法を使って敵機を墜落させるシーンだ。とてもシンプルなシーンなんだけど、私の想像する「能力を使用する感覚」と一番合っている。
別に特別な演出じゃないけど直感的で肌にマッチする描写を取り入れているから楽しんで欲しい。
それ以外にも好きなバトルシーンが沢山ある。
ミステリーとしては、透明人間というキーワードが沢山出てくる漫画だ。
過去にミステリー漫画を描いたことはあるけど、今回もなんとなくゆるくミステリーをやっている。
荒木飛呂彦は作品の中心に謎を置く。謎があるから引き込まれるというような創作論だ。
誤訳は、別にただのミステリーというわけではないけど、物語の行方を想像する要素が沢山登場して、絡み合って、物語ができていく。
単純に謎とその解決は快楽を生むと考えている。誤訳の味付けの一つだ。
誤訳は様々なキャラクターが登場する。私は誤訳のキャラクターをみんな愛していて、彼ら一人ひとりに対して、持ち場を与えている。
キャラにとって大事な持ち場だ。見せ場ほどの大層なものじゃないにしても、キャラ一人ひとりにちゃんと出てきた役目を与えて、持ち場での役割を果たしてもらう。
物語をキャラクター達に作ってもらう。
中でも主人公格のキャラは四人いて、彼らには特に特別な見せ場や、色々なものを与えている。
あえて名前を挙げるなら、誤訳にはトイショップ博士という女が出てくる。
トイショップはフィクションによくいる悪の科学者で、最初から自分の研究のために他人を利用して好き勝手やることしか考えていない。
トイショップはどれだけ世界をめちゃくちゃにしても一切反省しないし、ずっと好きなことしかしない。世界も人も全部自分のおもちゃだと思っている。
読む前に断っておくと、誤訳は象徴や寓意を多分に含ませて意味深いものにしようということは一切考えていなくて、トイショップも遊び心の象徴であるとかあんまり考えていない。ただの人物だ。
トイショップを気に入っている要因は様々あるが、とりあえず読んでほしい。でも好きになるかどうかは自由だ。
詩については久しぶりに詩を書き込んだシーンがある。
透明人間という詩と、誕生という詩だ。
これについては事前に説明することはない。
久しぶりに詩を書いた。
SF要素や新しい概念も登場する。
この物語の根幹に関わる設定である。
技術に対するフィジカルなロマンが多く盛り込んである。
様々なジャンルを申し上げたが結局ジャンルは何なのかというとSFアクションとかじゃないだろうか。
全編エンタメ的で、見どころのページが大量にある。
エンタメである。
クオリティに関して言えば、作者が描いたものの中では特に力を入れているので一定以上のクオリティは保証できる。
あとは好みに合うかというところ。
誤訳に似た漫画か映画があるか考えてみたが、思いつかなかった。
子供っぽくて、自由で、楽しくて、激しくて、少し虚しい。
お楽しみに。