勝子さんの墓参り

私が思ったことをそのまま書いているため、失礼な表現が度々あります。先にお詫びいたします。



今日。2019年5月11日。これを書いている今は日付が変わって12日です。

とまる勝子さんが死んだのが2018年5月10日。今は彼の命日から一年と二日経ちました。

幹事のすぺくたちゃんさんと私を含む、生前勝子さんと親睦のあった15人と勝子さんのお墓参りに行ってきました。

完全に不謹慎なんですが、私は正直、友人がどんなお墓に入っているのか完全に楽しみで墓参りに参加していました。生前散々めちゃくちゃをやって良くも悪くも周囲や周囲外の人間に影響を与えまくった一人の男の墓。
漠然と、絶対に普通の墓には入っていないだろう、彼が生前愛していた天使のモチーフで飾られた、今まで見たことがないような特殊な墓石の下に眠っているだろう、そうに違いない。
半分冗談ですが割りと本気で期待していました。

私の過剰な期待はともかく、友人が死に、墓に入るというのは私にとっては初めての経験で、それは私の大切な記憶になることは間違いなかった。
(墓参りが終わった後にルノアールで人の記憶の不確かさを私たちは笑った。)

まずは霊園の、勝子さんの墓を探す。
そこに着いた時、霊園の名前を聞いた時に想像していた花が咲き乱れる鮮やかな霊園のイメージはそこにはなく、見慣れたような、墓場。日本の普通のお墓の様子が広がっていた。失礼な言い方をすると、普通のお墓だった。あなたは「当たり前だろボケが」と思うかもしれないが、私にとってはそれなりに衝撃的だった。

古くからある、文化祭でお化け屋敷として再現されるような、ステレオな、普通のお墓だ。
その普通さが。私にとっては、人は必ず死ぬということを語っているように感じた。どんな異常な男であれ、死ねば煙か土か食い物のうち灰を選択して石の下に埋まるのだった。

その光景を目にしてから、勝子さんの墓を見つけ、まずはしっかりと墓石を見た。右から左に書かれた「冥福」の二文字を見た。それでもまだ何の実感も沸かなかった。

墓石の裏側を見る。
彼の本名と、死んだ日時、死んだ歳が彫られている。
それを見て初めて実感が湧いた。

今まで、死んだという知らせを聞いてから今までの一年間ずっと、彼の姿を見ていなかったから。彼がまだ私の知らない何処かに隠れていて、また姿を表すかもしれないと思っていたから。可能性を信じていたから。名前を見たその瞬間にかくれんぼは終わった。
そこに彼がいるのだと思ったわけではないが、突然彼にもう二度と会えないんだということを完全に理解した。知った。心で知った。
勝子さんはもういないんだと、諦めがついた。
死んだんだ。
終わったんだと感じた。

これから少しでも、彼が何事もなかったかのようにコミティアの私のスベースに現れて、私がただ呆然と、彼の顔を見る。彼はそれを見て喜ぶ。そんな可能性が。

そんなことはもう無いんだということが、本当に、今日初めて分かった。受け入れられた。

墓参りの雰囲気が全体的に和気あいあいとしていたことからか、私は特に感情的になって泣いたりしなかった。その代わりにこの一年間ずっとしんどかったしこれからも時々現れて寂しくさせてくるんだよ。その金箔のように時間に薄く叩き伸ばされた悲しみを、今ここで、泣いて、解決しちゃおうなんてことは出来ないことになっていた。

しばらく墓の周りをうろついたりしてから、「冥福」の二文字の意味を噛み締めて、墓の前で手を合わせて、なんで泣けなかったんだろうなどという雑念を振り払いながら、もし冥福なんてものが本当にあって、あの世も魂もあるのなら、どうぞ、彼の魂を鎮めるのならどうぞそうしてくれと何かに祈った。

鎮魂という言葉の意味を知った。

天や魂を信じているほうではないけど。

こんなに沢山の人が墓参りに来てくれて、いいお墓に入れてもらえて、早死にしてしまったことは不幸だったけども、彼は恵まれていると思った。

これを書いて今思うのは、ただ彼が良い友達だったなあということと。彼ともっと色々なことがしたかった。お互いに生きていたら出来たはずのあらゆることだ。できた可能性だ。

不謹慎だけど、彼が死んだのがアル中が原因だとしても、なんていうかむしろ、それくらいめちゃくちゃに自分の生を生きる気力がある。

私は酒は飲まない、けどたまに不眠で何かをやったりだとか、暴飲暴食?とか、趣味のことをもうめちゃくちゃにやって、明日のことがどうでも良くなっちゃって、それくらい今に熱中すること。自分がやりたい無茶をやるだけやって、さっさと死ぬこと。

そう生きたいな、自分は、変わることなく。そう思っている。彼の死から何も学んでいない。
さっきモンエナは本当に腎臓に悪いと言われたのに。

でも本当に、最近勝子さんの酒癖のような、人間のダメな部分が好きになってしまって、それしか考えられない。

愚かしく醜く死んでいくこと。

人生。恥。親不孝。

愛らしくてたまらない。

既に人に迷惑をかけまくっているのにこんなこと言えないんだけど、なるべく人に迷惑かけないように生きて死にます………なるべく………。

関係者の皆さん、ありがとうございました。お疲れ様でした。