映画 響 感想

映画 響 -HIBIKI-を観ました。
中島哲也の告白みたいな感じの軽いノリのエンタメなのかと思ったらストーリーがめちゃくちゃ面白かった。(告白も決して軽くはないか。話も面白い。でもアレほとんどミュージックビデオじゃない?)

あらすじを書くのは苦手なので公式サイトを見てください。この映画にとって重要なのは天才女子高生響と個性豊かな友人や大人との細かなやり取りに生じるドラマ性なんだけど、大まかなあらすじはこの通り。
http://www.hibiki-the-movie.jp/sp/story.html

ここからは若干のネタバレ(核心には触れない程度に)しながら感想を書く。



パンフレットを読んで初めて主演女優がアイドルグループのセンターをやっていると知った。欅坂46については私は何も知らないし、原作は未読、映画響の前情報も主演の演技がとにかく良いという噂を聞いたのみだった。あとは原作が良いという噂は聞いていた。

2018年春頃に私の中に天才ブームというのがあった。友人から薦められていた「すべてがFになる」には天才が出てくるというのでそれを読もうと思っていた時期だ。その時にこの映画を観ていたら尚更ヤバかったと思う。すべてがF〜は今でも読みたいが。

響以外も、とにかく登場するキャラクターが全員好きだ。俳優について詳しくないけど主演の響然り、神がかり的なキャスティングだったんだろうなというのは感じる。

響の暴挙は全て好きだが、特にスタイリッシュだったのは勿論あのラストの飛び蹴りシーンが一番好きで、
あと個人的に映像が一番かっこいいと思ったのは、道で記者に質問責めにされ写真を撮られまくるシーンで、響がトラックの音を聞きつけてカメラをぶん取ってトラックに投げて轢かせて破壊するシーン。これはもうめちゃくちゃかっこよかった。機転の効かせ方も含めて、めちゃくちゃスタイリッシュだった。まあ響はやることが全部かっこいい。

そこから記者の家に乗り込むシーンへのスムーズな流れもめちゃくちゃかっこいい。鮎喰響は自分の信念のために人の指を平気で折るし無断で人の部屋に入るし実質ウォッチメンロールシャッハだ。

小栗旬演じる売れない小説家がガラケーで受賞の連絡を待つシーンも良かった。明確に響と対比されている。オタクが大好きな「もう一人の主人公」的な小栗旬。好きだ。

鮎喰響を好きな要因の一つに、響は純粋な創作意欲に従って小説を書いているというのがある。
賞を取りたいとか、多くの人に読んでほしいという欲は「うれしい」という一言の感想で片付ける程度しかなくて、芥川賞直木賞を同時に受賞してからも創作意欲は全く衰えず新作のアイデアが思い付いたらまずは担当編集者に読んでほしいとだけ思うような、本当に純粋な気持ちで小説を書いている。共感できる。

エンディングの曲も良かった。存在しないどこかをいつだかの夜に彷徨っているような歌詞が、どことなく神聖かまってちゃんっぽさを感じたけど、作詞は秋元康だった。

この映画を薄っぺらい言葉で表現してしまうと、詰まるところ響という天才キャラクターの言動が一番面白い要因なんだろうけど、まぁ天才の常軌を逸した言動を面白がらないのは私には難しい。

世間には天才やエンタメや面白いものが好きじゃない人もいると思うけど、私は天才とエンタメと面白いものがめちゃくちゃ好きだ。面白いものについてずっと永遠に考えていたい。

パンフレットを読んで知ったことだけど、響きが暴挙に出る時のイメージカラーが「赤」らしくて、最初タイトルロゴを見た時、何故響の立の字の真ん中とHIBIKIのBだけ赤いんだろうと思ってたけど、そういう熱が響の中にこもっているということなんだとあとで理解した。

原作者と脚本家が打合せした時に出たという原作者の「この作品はホラーでもある」という言葉も好きだ。響が女子高生らしい無邪気さを見せる中盤から後半にかけての(特に動物園の)くだりが無かったら、本当にただの天才(異常者)が凡人に復讐していく話になってしまう。それはそれで面白かったのかもしれないが。でも天才としての恐ろしさと決して曲げない信念と女子高生らしい可愛さを兼ね備えたキャラクターが鮎喰響なんだ。

映画を観て、この強烈な響というキャラクターは私の中の何かと一体化して、完全に私の中に住み着いてしまった。
響がロリータを着たのも、きっと偶然ではない。私はロリータと、ロリータを着る女性を自由意志の象徴として扱い、漫画にも何度か書いている。
響は物語では半ば強制的に友人にロリータを着せられるが、現実ではもう一人の響たる平手友梨奈の提案でロリータ服の実装が実現しており、平行世界の響の隠された欲求とも解釈できる。

あと他人事に感じられないなと思ったのは、響が一対一の対話によるコミュニケーションを好むことと、時には殴り合いをコミュニケーションの一環として採用することだ。この辺は好みだと思うけど、私がこの響という少女に共感した大きな要因の一つだ。

これだけの物を見てから、原作を読むか悩んでいる。原作を読んでいる人たちは映画に収まらなかった面白さがあと5倍くらいはあると言っていて、そんなものを読んだら発狂するんじゃないかという心配と、映画響のまとまりが良すぎて、私は一本にまとまった単一の作品が好きだからわざわざ原作を読まなくても良いかなという気持ちがある。

表紙見る感じだと、響めちゃくちゃ美少女に描かれてないか?
やっぱり実写のちょっと不細工な(あくまで二次元と比べた時の三次元の不細工さという意味で、平手友梨奈はめっちゃ美少女だと思う)ところがある響の方が好きかもしれない。愛嬌があって。

あまり人に薦めたくないけど、エンタメが好きな人や天才が女子高生という肉体を借りて常識や社会やクソみたいな大人に蹴りを入れているのを見たいと思う人は観たらいいのではないかと思います。